きらり健康生活協同組合

みんなの診察室

現代の食養生ヒント(2021年7月 更新)
須川診療所 医師 中島 大

 まだ医大生だった頃、生理学の講義の中で、摂取したブドウ糖がどのように体内でエネルギーを生み出し、 代謝されていくのかを学んだことを覚えています。当時は複雑な相関図を覚えることで、精一杯でした。

日本の医学部では栄養学についての勉強はほとんどされてきませんでしたが、近年は栄養学の内容も増え、見直しがされているようです。 また、分子栄養学といった分野の研究が進み、必要な微量元素やビタミンをサプリメントとして摂取することを推奨するような本や雑誌が出され、 スーパーやコンビニエンスストアでもサプリが売られているのを見かけるようになりました。

現代は食事の種類も豊かで、出来合いの食材も入手しやすくなっています。
豊かな食生活の一方で、高血圧症、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病といわれる疾患も多くの方を悩ませています。 漢方では健康管理は食養生が基本で、その重要性を説いた江戸時代の文献も多く残されています。

今回は現代の食養生のヒントとして、現在わかっている「塩」と「味噌」について紹介したいと思います。

「塩」について

 食事の中で摂取している塩は、どのようなものを選べばよいでしょうか。

白澤卓二先生(千葉大学予防医学講座客員教授 )が書かれた「すごい塩」の内容を一部紹介します。
この本には「体にいい塩=海水と同じミネラル※1が含まれた塩」と書かれています。 一般的に広く売られている精製塩はほとんどミネラルを含まず、ほとんどが塩化ナトリウムで構成されています。

一方、海水から作られる海塩には、ナトリウムやマグネシウム、カルシウムなどが含まれます。 県内でもミネラル豊富な塩が作られていて、我が家の食卓にもよく上がる会津山塩は、 地層に閉じ込められた太古の海水が高温の地下水に溶け出して源泉になったものを煮詰めて作られたもので、ミネラル成分が多く含まれています。 (HPを見ると、マグネシウム、カルシウム、カリウムは海塩より多く含まれているようです)

 また、白澤卓二先生は「「塩」はナトリウムとカリウムの相関関係にあるため単独でナトリウムばかり摂取するとミネラルバランスが崩れて体調を崩す原因になる」と話されています。
精製塩を摂りすぎると、ミネラルバランスが崩れやすくなり、マグネシウムやカリウム不足を生じて、高血圧をはじめとする様々な病気の原因になりうるのです。

汗をかいたときは水だけでなく塩も摂りましょうといわれますが、汗をかくと水分だけではなくナトリウムやほかのミネラルも排出されてしまうからです。 「マグネシウム※2」もその一つです。精製塩より、ミネラルを多く含んだ海塩や山塩を摂取することで体のバランスが整いやすくなるのでしょう。

「お味噌」について

 2013年10月26日、上原 誉志夫先生 (共立女子大学家政学部臨床栄養学教授)が、日本高血圧学会総会で味噌汁の塩分は血圧に影響しないことを発表されました。 東京都内にある病院の人間ドックを受診した現在治療していない男性102名(平均年齢55歳)に対し、食物摂取頻度調査を実施し、人間ドックでの成績との関連性を調べられました。

5日間に摂取する味噌汁摂取回数を、0~2回を低頻度群、3~5回を中頻度群、6~15回を高頻度群と分けました。また血管年齢は脈波伝播速度を血圧値で補正したCAVI値※3により評価しました。 以下のような内容がわかりました。

  • ①味噌汁を摂取する頻度と高血圧の関連はなかった。
  • ②味噌の中の食塩は食塩摂取量に影響を与えず、食塩摂取量への寄与率は2%だった。
  • ③味噌汁を1日約1杯摂取する生活ではCAVI値が低下する(血管年齢が10歳程度改善する)傾向が確認された。
  • ④1日3回までの味噌汁摂取では食塩の過剰摂取でみられる代謝への影響(脂肪肝など)は見られなかった。
  • ⑤味噌には抗動脈硬化作用をもつ整理作用物質が含まれる可能性が示唆される。

「減塩=味噌汁を減らすこと」と考えられてきましたが、この研究により、味噌汁は食塩摂取量の独立した決定要因ではないことが明らかになったのです。 上原先生は「血圧の上昇を気にして、味噌汁を減らすことにあまり意味はなく、減塩をめざすのであれば、他の因子(調味料・香辛料類など)を減らした方が効率的。 1日1杯の味噌汁のある生活を心掛けでみましょう」と話されています。

また、これまで「きらり健康生協」で取り組んできた、食事全体の食塩摂取量には注意しながら、具材(野菜や海藻類等)を工夫した栄養バランスのよい具だくさん味噌汁をおすすめします。 日本を代表とする発酵食品、味噌を上手に摂取して降圧につなげてみましょう。 海水由来の塩でできた味噌を使うと尚良いかと思います。

※1 ミネラル
酸素、炭素、水素、窒素以外のものをいい、無機質とも呼ぶ。ミネラルは、体内でつくることができないので食べ物などから摂取する必要があります。
【必須ミネラル16種類】
ナトリウム、マグネシウム、リン、硫黄、塩素、カリウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、セレン、モリブデン、ヨウ素

※2 マグネシウム
豆類や海藻・種実類(ごま、アーモンドなど) に含まれ、糖からエネルギーを生成するのに必須の成分の一つです。

※3 CAVI(Cardio Ankle Vascular Index)
きらり健康生協の診療所では血管脈波検査装置VaSera(バセラ)で測定できる項目の一つで動脈の硬さの指標です。 心臓から足首までの動脈の硬さを反映する指標で、動脈硬化が進行するほど高い値になります。

  • 低い値…柔らかくしなやかな血管であることを表します。
  • 高い値…血圧が上がっても膨らみは小さい血管であることを表します。